薬機法での化粧品の定義

化粧品は客観的な効能・効果がわかりにくいため、広告作成にあたって多くの表現規制が設けられています。それらに反した広告を作成してしまうと、誇大広告(虚偽広告)として規制の対象となってしまうだけでなく、消費者の信用も失ってしまいかねません。

そこで今回の記事では、化粧品広告の表現規制について、薬機法や医薬品等適正広告基準の記述に基づいて詳しく説明し、具体的なNG広告の例について確認していきます。

そもそも「薬機法」とは?

薬機法とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の品質や有効性、安全性を確保することを目的とし、製造・販売・広告などにおける規制を定める法律です。正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言い、2014年に旧「薬事法」から名称が変更となりました。

薬機法はその名前から、医薬品にのみ関係する法律だと勘違いされがちですが、化粧品にも大きく関わる法律です。そのため、化粧品広告を作成する際には十分に注意を払う必要があります。

 薬機法での化粧品の定義とは?

薬機法では、化粧品を次のように定義しています。

この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

引用:薬機法第2条第3項|e-Gov 法令検索

つまり化粧品とは、身体を清潔で美しく、皮膚や毛髪を健やかに保つための緩和な作用をもつものだということです。そのため、それ以上の改善効果や具体的な効能があると謳ってしまうと薬機法違反になってしまいます。

【参考記事はこちら】:健康食品のチラシは薬機法(薬事法)に要注意!気をつけるべき4つのこと

 化粧品広告で表現できる効能・効果は56種類

一般化粧品で表現できる効能・効果は、薬機法にもとづき、厚生労働省によって明確に定められています。それを超えた表現をすることは、事実であるか否かを問わず規制の対象となるため、化粧品広告を作成する際には十分に注意する必要があります。

厚生労働省によって定められた一般化粧品の効能・効果の内訳は、以下の56種類です。

(1)頭皮、毛髪を清浄にする。 (15)髪型を整え、保持する。 (29)肌を柔らげる。 (43)口唇のキメを整える。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。 (16)毛髪の帯電を防止する。 (30)肌にはりを与える。 (44)口唇にうるおいを与える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。 (17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。 (31)肌にツヤを与える。 (45)口唇をすこやかにする。
(4)毛髪にはり、こしを与える。 (18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。 (32)肌を滑らかにする。 (46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。 (19)肌を整える。 (33)ひげを剃りやすくする。 (47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。 (20)肌のキメを整える。 (34)ひげそり後の肌を整える。 (48)口唇を滑らかにする。
(7)毛髪をしなやかにする。 (21)皮膚をすこやかに保つ。 (35)あせもを防ぐ(打粉)。 (49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(8)クシどおりをよくする。 (22)肌荒れを防ぐ。 (36)日やけを防ぐ。 (50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(9)毛髪のつやを保つ。 (23)肌をひきしめる。 (37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。 (51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(10)毛髪につやを与える。 (24)皮膚にうるおいを与える。 (38)芳香を与える。 (52)口中を浄化する(歯みがき類)。
(11)フケ、カユミがとれる。 (25)皮膚の水分、油分を補い保つ。 (39)爪を保護する。 (53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(12)フケ、カユミを抑える。 (26)皮膚の柔軟性を保つ。 (40)爪をすこやかに保つ。 (54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。 (27)皮膚を保護する。 (41)爪にうるおいを与える。 (55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。 (28)皮膚の乾燥を防ぐ。 (42)口唇の荒れを防ぐ。 (56)乾燥による小ジワを目立たなくする。

引用:化粧品の効能の範囲の改正について|厚生労働省

定められていない効能・効果は、事実であっても表示NG

上記56種類に含まれていない効能・効果については、たとえ事実であったとしても広告として表示することは認められていません。

たとえば、ある化粧品を使って顔のシミが消えた消費者が実際にいたとします。この消費者が個人的に、その効能・効果を他人に伝えたり、口コミやレビューで表現すること自体は自由です。しかし、「顔のシミが消える」という効能・効果は56種類に含まれていないため、化粧品広告として表示すると法律違反になってしまいます。

体験談で効能・効果について表示するのはNG

消費者の体験談というのは、広告要素としては非常に重要なものです。しかし、体験談の中には広告に使用できるものとできないものがあるので注意が必要です。

薬機法に基づいて発出されている「医薬品等適正広告基準」では、広告での使用体験談の使用は以下のように定められています。

(5)使用体験談等について

愛用者の感謝状、感謝の言葉等の例示及び「私も使っています。」等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者に対し効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため以下の場合を除き行ってはならない。

なお、いずれの場合も過度な表現や保証的な表現とならないよう注意すること。

①目薬、外皮用剤及び化粧品等の広告で使用感を説明する場合

ただし、使用感のみを特に強調する広告は、消費者に当該製品の使用目的を誤らせるおそれがあるため行わないこと。

②タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合

引用:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について|厚生労働省

ここからわかるのは、化粧品の広告における使用体験談は使用感の説明においてのみ認められ、効能・効果の説明としては使ってはいけないということです。

そのため、「肌馴染みが良くて使いやすいです」といった使用感にのみ言及する使用体験談はOKですが、「使うことで肌の汚れ落ちが実感できました」などと具体的な効能・効果に言及するものはNGとなります。

たとえ「個人の感想です」「効果には個人差があります」などの注釈をつけたとしても認められないので、十分に注意しましょう。どうしても使用体験談の内容で困ったときには、「商品を使った後の結果や結論を言わない」というような配慮をする事でリスクを下げることも検討できます。しかしながら、絶対に問題無いとは言い切れませんので表現には注意が必要です。

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化粧品の誇大広告とは?「医薬品等適正広告基準」に照らし合わせてご紹介

化粧品広告において、実際の効能・効果を超えた内容を表示することは誇大広告(虚偽広告)として規制の対象となります。事実、薬機法でも以下のように定められています。

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

引用:医薬品等の広告規制について|厚生労働省

では、具体的にどのような表現が誇大広告(虚偽広告)にあたるのでしょうか。

ここからは、薬機法に基づいて厚生労働省が各都道府県に発出している「医薬品等適正広告基準」の記述に照らし合わせながら、具体的なNG例を確認していきます。

「最新科学に基づいて配合されたクリーム」

自社製品の素晴らしさを伝えるために、こだわりの製造方法や技術について広告の表現に使いたくなりますよね。しかし、医薬品等適正広告基準では製造方法や技術について「実際の製造方法と異なる表現又はその優秀性について事実に反する認識を得させるおそれのある表現」を使ってはいけないと定められています。

この場合、実際と異なる虚偽の内容表現が不適切であるのは言うまでもありませんが、「最新」「最高」「理想的」などと、その優秀性を過度に誇張する表現もNGです。

 「誰でもシミ・そばかすが無くなります」

化粧品の魅力を伝えるために、「誰でも〇〇になれます」や「必ず〇〇が実現します」といった表現を広告で使用することは誇大広告にあたります。医薬品等適正広告基準でも「医薬品等の効能効果等又は安全性について、具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現をしてはならない」と定められています。

また、医薬品等適正広告基準には「効能効果等又は安全性を保証する表現については、明示的、暗示的を問わず認められない」という記載もあるので、「シミ・そばかすの改善が期待できるでしょう」のような暗示的な表現であってもNGです。

「臨床試験の結果、90%以上の被験者の肌質が改善」

化粧品の効能・効果について、信ぴょう性を高めるために臨床データなどの具体的数値で示したくなるものです。しかし、医薬品等適正広告基準では「臨床データや実験例等を例示することは消費者に対して説明不足となり、かえって効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがある」とされており、原則として広告表現での臨床データの使用が禁止されています。

また、臨床データを用いる意図は、効能・効果の確実性を保証する点にあることがほとんどです。そのため、大筋で見れば前出の「誰でもシミ・そばかすが無くなります」と同様の理由でNGと考えることもできます。つまり、具体的な数値があるか否かに関わらず、化粧品広告においては確実性の保証を意図した表現は認められないと考えて良いでしょう。

「他社のリップより長持ち実感」

化粧品広告において、他社製品と比較した表現をすることはNGです。医薬品等適正広告基準にも「医薬品等の品質、効能効果、安全性その他について、他社の製品を誹謗するような広告を行ってはならない」と定められています。具体的な他社製品の名称を挙げるのはもちろん、漠然と暗示的に比べることも認められません。そのため、「一般的な」といった濁した表現であっても規制対象になる可能性があります。

広告の中で製品の比較を行いたい場合は、自社製品との比較にとどめておきましょう。ただし、その場合も「対照製品の名称を明示する場合に限定」と定められているので、比較する際は自社製品の名称をしっかり記載するよう注意しましょう。

文中引用:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について|厚生労働省

化粧品の広告規制は「化粧品等の適正広告ガイドライン」も参考に

ここまで、薬機法に基づいて厚生労働省が発出する医薬品等適正広告基準に照らし合わせて、具体的な広告表現のNG例について確認してきました。

薬機法と医薬品等適正広告基準は、いずれも政府が発表しているものなので内容が難解です。そのため、自力で通読するのはなかなか難しいでしょう。そこでおすすめしたいのが、「化粧品等の適正広告ガイドライン」という資料です。

「化粧品等の適正広告ガイドライン」は、薬機法と医薬品等適正広告基準の趣旨に基づいて「日本化粧品工業連合会(粧工連)」という団体が作成した自主規制のガイドラインです。そのため、広告作成をする際の注意点がより嚙み砕いてまとめられています。実際に化粧品広告を作成する場合は、こちらにもぜひ目を通しておくようにしましょう。

参照:化粧品等の適正広告ガイドライン|日本化粧品工業連合会

まとめ

今回は、化粧品広告の表現規制について、薬機法や医薬品等適正広告基準の具体的な記述に照らし合わせながら詳しく確認していきました。

具体的なNG広告表現の例についても触れましたが、今回紹介できたのはごく一部に過ぎません。実際に化粧品広告を作成する場合は、薬機法や医薬品等適正広告基準、そして民間団体によって作成された「化粧品等の適正広告ガイドライン」などを参照し、消費者に誤解を与えない広告表現になるよう気を付けましょう。

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